第229回なぜ赤本は売れ続けるのか
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
入試シーズンになり、試験問題の著作権について考えてみました。
他人の著作物である小説や評論を、試験問題として著者の許諾なく使うことは、著作権法で認められています。
著作権法36条に
「公表された著作物については、入学試験の目的上必要と認められる限度で、当該試験問題として複製することができる。」
と規定されているからです。しかし、試験問題を作成する者(つまり学校)は、使用料に相当する補償金を著作権者に支払う必要があります。
しかし試験終了後に問題が学校のウエブサイトに公開されますが、ここでは国語の問題が掲載されないことが多いです。これは他人の著作物を含んで試験問題を学校のウエブサイトに掲載して、試験問題を一般に知らせることは、著作権法が認めている試験問題としてなら複製できることの対象外だからです。
過去問を掲載したいわゆる「赤本」を作成するにも、著作者の許諾は得られています。
赤本を発行する(株)世界思想社教学社のウエブサイトを見ると、
著作者がわからない著作について情報を求めています。
「著作権者の方を捜しています」((株)世界思想社教学社)
https://akahon.net/settle
受験生は特に他人の著作が載っている過去問が学校のウエブサイトに載っていないため、赤本を見るしかありません。このネット時代でも売れ続けているのは、それが理由であると聞いたことがあります。
The season for entrance examinations has come, which has made me think about examination question copyright.
Copyrighted works such as novels or essays can be used in examination questions without their authors’ authorization under Copyright Law.
Article 36 of the Copyright Law states that published copyrighted works may be reproduced as examination questions to the extent necessary for the purpose of the entrance examination, provided that those who design the examination questions, namely schools, pay the copyright holder compensation equivalent to the ordinary royalty rate.
Although examination questions are ordinarily posted on school websites after examinations, Japanese literature questions are not often posted.
This is because posting examination questions which include other persons’ works on school websites is outside the ‘reproducing them as examination questions’ remit permitted by Copyright Law.
The so-called Akahon (Red Book), in which past examination questions are published, is written by obtaining authors’ approval. Sekaishisosha-Kyogakusha Co., Ltd., the company that publishes the Akahon, is asking for information on their website about works whose authors are missing.
“We’re searching for copyright holders.” (Sekaishisosha-Kyogakusha Co., Ltd.)
https://akahon.net/settle
As past examination questions for Japanese literature are not posted on school websites, examination candidates have no choice but to refer to the Akahon, especially for questions that use other persons’ works. This means that the Akahon sells well, even in the Internet age.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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