第237回地獄カレーの争い その2
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
前回のブログで、「地獄のカレー」という登録商標(5,376,915号)
を有する札幌市の会社((株)北都)が、
「血の池地獄カレー」という商品名((株)Hell Company(大分市)
に対し、商標権侵害として提訴したことを伝えました。
報道によると、Hell Companyの「地獄のキーマ」というカレーに対しても侵害であると主張しているとのことです。
J-PlatPatで調べてみると、
「地獄のキーマ」という商標がHell Companyより昨年11月に出願されており(商願2019-150149号)、審査中です。
さて、「地獄のキーマ」は「地獄のカレー」に類似すると判断されてしまうでしょうか?
「キーマ」はひき肉(ヒンディー語やウルドゥー語)を意味しますが、この意味を連想しがたいです。
指定商品が「カレー・シチユー又はスープのもと」なので、これの原材料とも判断される可能性もゼロではありませんが、この商標出願は「地獄のキーマ」のように一連に書かれているので、「キーマ」だけを取り出す可能性は非常に低いでしょう。
「地獄のキーマカレー」であれば、「地獄のカレー」との類似は避けることはできなかったでしょう。
I informed you in my previous blog that a company (Hokuto Co., Ltd.) in Sapporo City having the registered trademark “Jigoku no Curry” (No. 5,376,915) filed a trademark infringement lawsuit against “Chinoike Jigoku no Curry” (Hell Company Co., Ltd., Oita City).
It is reported that Hokuto is insisting that Hell Company’s “Jigoku no Keema” also infringes on their registered trademark “Jigoku no Curry.”
A search on JPO’s search engine J-PlatPat reveals that a trademark application was filed by Hell Company for “Jigoku no Keema” last November (Japanese Trademark Application No. 2019-150149) and is currently pending before JPO.
I wonder if they will judge “Jigoku no Keema” to be similar to “Jigoku no Curry”?
“Keema” means minced meat in Hindi or Urdu, however we are unlikely to associate the word with this meaning in Japanese.
The designated products are “curry, stew, or soup bases,” therefore it is not entirely impossible that the word “keema” will be judged as an ingredient. However, as the name in the trademark application is written as one connected word, “Jigokunokeema” (地獄のキーマ), there is a very slim possibility of the single word “keema” being isolated.
For “Jigoku no Keema Curry”, it would not be possible to avoid similarity to “Jigoku No Curry.”
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
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