第240回出版社に眠る有効資産活用の取り組み
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
出版社に眠る資産を電子書籍で復刻させるという取り組みが、電子出版を推進するイースト(株)により行われるというニュースです。
出版社の休眠資産を掘り起こす「電子復刻」~権利処理や売上管理を代行するイーストの狙い (HON.jp News Blog)
https://hon.jp/news/1.0/0/29023
復刻版が出せない理由の一つは、著者の連絡先が分からない、出版社の担当者変更などで権利関係がわからないことです。
著者のわからない、あるいは特定しがたいオーファンワークスの復刻版を出す際に必要になる著作者の調査、紙書籍を電子書籍にすることについての承諾の取得などの手続きを文化庁長官による裁定制度を利用しつつ、イースト(株)が引き受けてくれるとのことです。
これらの権利処理や、電子書店に販売したり、売上管理、印税の計算など手続もイースト(株)は基本的には無償で行ってくれるそうであり、5年間は販売先が特定の書店に限っては、売上の40パーセントを出版社に支払うそうです。
ところで、文化庁による裁定制度とは、サーチを尽くしても著者のわからない著作物を利用する場合(復刻版を出すなど)に、文化庁長官の裁定を受け、使用料に相当する補償金を供託することで著作物を利用できるという制度です。
この裁定制度はオーファンワークスの有効活用が趣旨ですが、さらに休眠している紙の書籍が電子的に有効活用されるために利用されることとなります。
A plan to revive dormant assets held by publishers as electronic books will be undertaken by EAST Co., Ltd., a company which promotes electronic publishing.
EAST aims to take care of electronic reprinting, including handling rights and sales management of unearthed dormant assets of publishers. (HON.jp News Blog)
https://hon.jp/news/1.0/0/29023
One of obstacles to reprinting books is when authors’ contact details are unknown or when a there has been a change of person in charge at a publisher, making rights-related matters unclear.
East will take care of searches for authors and obtainment of approval for converting paper books to electronic books etc., which is needed for reprinting orphan works whose authors are unknown or difficult to identify, using compulsory licenses issued by the Commissioner of the Agency for Cultural Affairs.
Reportedly, East will also conduct procedures for right processing, sales management, calculation of royalties etc., essentially for free, and will pay 40 percent of sales to publishers for five years for books that will be sold to certain bookstores.
The issue of compulsory licenses by the Commissioner of the Agency for Cultural Affairs is part of a system to make it possible to use copyrighted works whose authors are unidentifiable after thorough searches, by having a compulsory license issued by the Commissioner of the Agency for Cultural Affairs, provided that the amount of compensation corresponding to a royalty is paid.
This compulsory license system intends to effectively use orphan works and will be further utilized to effectively use dormant paper books electronically.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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