第241回CORONAVIRUSの商標出願
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
とうとう恐れていたことが起こってしまいました。
「CORONAVIRUS」という商標が特許庁に出願されました(商標出願2020-18172号)。2月20日に出願されたので、コロナが日本ですでに騒がれていたころです。
出願人は誰でしょうか?
大阪の上田育弘氏です。
指定されている商品や役務は非常に多く、ここで書き尽くすことはできません。
電気通信機械器具、測定機械器具、電子出版物など多くの商品(第9類)
印刷物、文房具類など(第16類)
広告、電気機械器具類又は電気通信機械器具の小売り又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供ほか多くの役務(第35類)
この商標出願を目的を、上記3つの分類に出願されたことから予想してみます。
コロナウイルスの書籍(紙の本、電子出版物)についての商標をまず登録したいのでしょう。しかし、雑誌のタイトルであればよいのですが、書籍のタイトルは、内容表示になるという理由でほぼ取得できません。
また、たとえば、測定機械器具の名称としてCORONAVIRUSの商標を取得したいのでしょう。
しかし、これだけ世界的な問題になっているコロナウイルスのことばは、公序良俗に反するとして拒絶されるでしょう。この商標を登録されてしまうと、様々な商品や役務(サービス)の名称としてこのことばを他の人が利用できなくなるからです。薬剤が指定されていないのは、これを指定しても薬剤の効能を表すとして拒絶されるからでしょう。
At last, an incident which I have been fearing happened.
A trademark application for “CORONAVIRUS” was filed with the JPO (Japanese Trademark Application No. 2020-18172) on February 20, when coronavirus infections had already been widely reported in Japan.
Who is the applicant?
Mr. Ikuhiro Ueda in Osaka.
There are too many goods and services designated in the application for CORONAVIRUS to list them all here. They include:
Telecommunication machines and apparatus, measuring or testing machines and instruments, electronic publications, and many other goods (class 9);
Printed matter, stationery and study materials, and other goods (class 16);
Advertising, retail or wholesale services for electrical machinery or telecommunication machines, and many other services (class 35).
I presume the following about the goal of the trademark application that was filed, based on the aforementioned three classes. The applicant wants to register a trademark for CORONAVIRUS for books (paper books or electronic books). However, while titles of magazines can be registered as trademarks, titles of book are not permitted for registration as trademarks because they indicate the contents of the book. The applicant also wants to obtain a trademark for CORONAVIRUS as a name, for example, for measurement machines.
However, the word coronavirus, referring to the disease which has become a global issue, will likely be refused because trademark registration for the word is against public order and good morals. If the trademark is registered, it will prevent others from using the word in names of various products and services. I presume that a reason why drugs are not designated as goods is that a trademark for such a word would be rejected because the name indicates the effect of the drug.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
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