第271回「鬼滅の刃」の商標
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
前回のブログで「鬼滅の刃」の人形を販売目的で所持していた疑いで、男性が逮捕された話をしました。この行為は著作権法違反のほかに商標法違反であると報道されていました。
そこで「鬼滅の刃」が商標登録されているか否かを調べました。
J-PlatPat(日本特許庁、INPIT)では「鬼滅の刃」の商標登録が4件、商標登録出願を2件確認できました。いずれもこの作品の出版社である(株)集英社が商標登録、商標出願しています。
ところで、大阪の会社が「鬼滅」の商標を出願して、今年7月に拒絶通知を受けています。「鬼滅の刃」と何らかの関係があると誤解を生じさせる商標である、という理由です。
書籍のタイトルや漫画のキャラクターの名前は著作権法では保護されず、商標法や不正競争防止法に保護を求めるしかありません。しかしこの場合も著名性が必要であり、無関係の第三者の「鬼滅」の商標出願が拒絶されたのも、「鬼滅の刃」が著名だからです。
ことばには著作権がなく、「鬼滅の刃」という短い言葉を著作権で保護するのは難しいです。いずれにしても「鬼滅の刃」は著名なので、「鬼滅」という他人の商標出願さえ排除することができました。書籍のタイトルを「書籍」を指定商品として商標出願すると、内容表示という理由で拒絶理由が来る可能性が高いです。しかし他の商品や役務について商標登録しておくことをお勧めします。
In my last post I told you about a man who was arrested on suspicion of possessing fake figures of a character from Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba for the purpose of selling. This act was reported as a violation of trademark law, as well as copyright law.
So, I checked to see whether “Kimetsu no Yaiba” was registered as a trademark.
J-PlatPat (Japan Patent Office, INPIT) confirmed four trademark registrations and two trademark applications for “Kimetsu no Yaiba.” Shueisha Inc., the publisher of Demon Slayer, applied for or registered these trademarks.
Incidentally, a company in Osaka applied for the trademark “Kimetsu,” receiving a notice of rejection in July of this year. The reason given was that the trademark misleads people into thinking that it is somehow related to Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba.
Book titles and names of manga characters are not protected by copyright law, therefore the only way to protect them is to seek protection under trademark and unfair competition laws. However, in this case, notoriety of a work is important—the reason as to why an unrelated third party trademark application for “Kimetsu” was rejected is that Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba is famous.
Words cannot be copyrighted, thus it is difficult to copyright the short phrase “Kimetsu no Yaiba.” In any case, since Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba is so well-known, even the trademark application of “Kimetsu” by another party was able to be turned down.
If a trademark application for a book title is filed with “book” as the designated product, it is very likely that the application will be rejected on the grounds that it indicates contents in a common manner. It is advisable to register the trademark for other goods and services.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
バックナンバー
- 第294回2021.05.27
ファーストリテイリングがアスタリスクの特許を無効としようとしたが、知財高裁で敗訴 - 第293回2021.05.20
コロナワクチンの特許放棄の問題 - 第292回2021.05.13
「ステーキ宮のタレ」のレシピを掲載したことが話題 - 第291回2021.05.06
「お風呂が沸きました」のメロディーが音商標登録 - 第290回2021.04.29
炊飯をつくる方法特許 - 第289回2021.04.22
イオンが「ジャスコ」商標を出願 - 第288回2021.04.15
特許庁から漫画の審査基準が発行されました - 第287回2021.04.08
音楽教室訴訟が最高裁に上告される - 第286回2021.04.01
音楽教室での演奏に著作権使用料発生?の判決 - 第285回2021.03.25
ドトールから考えるブランドの高級感