第277回金魚電話ボックスの著作権侵害が認定される
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
金魚を泳がせる水槽のような電話ボックスが似ているとして、福島県いわき市の美術家が奈良県大和郡山市の商店街協同組合を訴えたが、この美術家の請求は奈良地裁で棄却されたというニュースをこのブログで伝えました(第204回)
このたび大阪高裁で美術家の主張が認められ、この商店街が設置した金魚電話ボックスは著作権侵害であるとの判断が下りました。
「金魚電話ボックス作品は「著作権侵害」と認定大阪高裁」(産経新聞)
https://www.sankei.com/west/news/210114/wst2101140017-n1.html
奈良地裁で美術家の訴えが認められなかった理由の1つは、電話ボックスで金魚を泳がせるのはアイディアと判断されたからです。著作権は表現に与えられるものであり、アイディアには与えられるものではありません。
しかし今回の大阪高裁の判決では、受話器から気泡を発生させる点について、美術家の作品に依拠している、複製であると判断されました。
受話器から気泡を発生させることがアイディアか表現かは難しい判断です。アイディアが形となって表れた美術品であると判断されたのでしょう(まだ判決文を見ることができないので、予想に過ぎません)。
一審の奈良地裁では、公衆電話ボックス内で金魚を泳がせるというアイディアを実現するために、「気泡を発生させようとすれば、もともと穴が開いている受話器から発生させるのが合理的かつ自然な発想である」から、創作性がないと判断されました。
限りなくアイディアに近い創作が創作性ある表現と認められたのは、よい前例となったといえます。
In blog post 204, I reported the news that an artist from Iwaki City, Fukushima Prefecture sued a shopping mall association in Yamatokoriyama City, Nara Prefecture over the similarity of a telephone booth that looks like an aquarium with goldfish swimming inside, however the artist’s claim was dismissed by the Nara District Court.
On this occasion, the artist’s claim has been recognized by the Osaka High Court, and a judgement of copyright infringement by the goldfish telephone booth installed by the shopping mall association has been handed down by the court.
“Goldfish telephone phone booth artwork recognized as ‘copyright infringement’ by Osaka High Court” (The Sankei Shimbun)
https://www.sankei.com/west/news/210114/wst2101140017-n1.html
One of the reasons why the artist’s suit was not accepted by the Nara District Court is that having goldfish swim in a telephone booth is an idea, not an expression. Copyright is given to expressions, not to ideas.
However, the judgement by the Osaka High Court on this occasion has determined that the element of generating bubbles from the telephone receiver is a reproduction based on the artist’s work.
It is difficult to determine whether generating bubbles from the telephone receiver is an idea or an expression. It was likely judged to be a work of art in which an idea took shape and was expressed (I cannot see the judgment yet, so this is only a prediction).
The Nara District Court, the court of first instance, ruled that there was no creativity in realizing the idea of having goldfish swim in a public telephone booth as, “if one wants to generate air bubbles, it is a reasonable and natural idea to generate them from the receiver, which already has holes.”
It is a good precedent that a creation that is as close to an idea as possible has been recognized as an expression that has creativity.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
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