- 2025.03.12
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【品質管理課ブログ】外国語を楽しく勉強

翻訳に関わる仕事を始めてからずいぶん経ちますが、いつまでたっても語学の勉強が終わることはないと日々感じています。毎日、英語や日本語の様々な文書を読んでいますが、常に新たな学びがあります。これまでいろいろな方法で英語を勉強してきましたが、それはこれからも続いていくでしょう。
外国語に興味があるみなさんは、どのように勉強しているでしょうか?いろいろな方法があると思いますが、趣味も兼ね楽しみながら学べる方法のひとつとして、私は英語の小説を読んだり映画を見たりするのが好きです。それぞれを単独で読んだり、見たりするだけでも楽しいですが、本と映画の違いを比べたり、原書と翻訳本の両方を読んだりすると、おもしろい発見や気づきがあります。
今回の「品質管理課ブログ」では、そのいくつかをご紹介します。
『ロスト・シンボル』
原書: The Lost Symbol (著者Dan Brown)
『The Lost Symbol』は、宗教象徴学者ロバート・ラングドンが主人公の小説で、同じ主人公が登場する5冊のラングドン・シリーズ小説の第3弾です。(トム・ハンクスが主人公を演じる映画の『ダ・ヴィンチ・コード』を見たのをきっかけに、原書の『The Da Vinci Code』を読み、おもしろかったので、その後シリーズ全ての原書を読みました。)
『The Lost Symbol』を読んでいると、登場人物の一人である日系アメリカ人CIA女性局長の名前が「Inoue Sato」であるという記載が出てきました。「え?どっちが名字で、どっちが名前?英語の語順的に、やっぱり下の名前が「イノウエ」で、名字が「サトウ」だよね…」と一瞬考えてしまいました。外国の名前は姓名の区別が難しい場合があるので、登場人物に外国の名前を付けるというのは、けっこう大変なことなのかもしれません。でも、この名前…、翻訳本ではどうなっているのだろう、と思いました。珍しい名前も存在するので、下の名が「イノウエ」さんという方ももしかするといらっしゃるかもしれません。しかし、日本で一般的な2つの名字が組み合わさった「サトウ イノウエ」という名前は、小説の登場人物の名前としてはインパクトが強すぎるように思います。
翻訳本の『ロスト・シンボル』を調べてみると、単に「サトウ」と書かれていて、「なるほど!」と思いました。日本語ではあまりフルネームで人の名前を書かないので、名字だけの記載でまったく問題がありません。しかし翻訳本の中に「イノエ・サトウ」という記載が一部ありました。なぜ「Inoue」が「イノエ」になったのか…、これには翻訳者様のご苦労があったようです。興味があるかたは、ぜひ以下の翻訳者様コラムをご覧ください。原書を読んだからこそちょっとおもしろい点に気づき、それに関わる翻訳の苦労を垣間見ることができた一冊でした。
参照) 翻訳ミステリー大賞シンジケート
コラム:「『インフェルノ』への道(その2)(執筆者・越前敏弥)」
『そして誰もいなくなった』
原書: And Then There Were None (著者Agatha Christie)
『And Then There Were None』を一通り読み終わった後に、図書館にあった翻訳本を見ていたところ、不思議なことに気づきました。原書に出てくる島の名前は「Soldier Island」(兵隊島)なのに、翻訳本では「インディアン島」となっているのです。同様に、原書に出てくる童謡「ten little soldier boys」は、翻訳本では「十人のインディアンの少年」です。「なぜ、兵隊(soldier)をインディアンに変えたのだろう?何か翻訳上の意図や理由があったのだろか?どういう理由だろう?」と思いました。しかし、図書館にあった別の翻訳本を見ると、こちらは原文通りに「兵隊島」と「十人の小さな兵隊さん」となっていました。
この違いが気になって、インターネットで調べてみると、とても興味深いことが分かりました。この本のタイトルや内容は、時代や国により変更されていたのです。ストーリーの中の島の名前や童謡の名前も同様に変更されていました。元々イギリスで『Ten Little Niggers』(十人の小さなくろんぼ)というタイトルで出版された本が、アメリカでの出版をきっかけに、差別用語の観点から『Ten Little Indians』、『And Then There Were None』へと変わったようです。よく見ると、私が購入した洋書の表紙には「Previously published as Ten Little Indians」(旧題:Ten Little Indians)と書かれていました。ストーリー内の島の名前や童謡も、同じように何度か変更されてきたようです。
外国語に訳す際に何らかの理由で表現等が変更されることもありますが、こちらの本のように、昔からの名作であっても、原書自体に変更が加えられることもあることを改めて認識した一冊でした。
『スタンド・バイ・ミー』
原書: The Body ※『Different Seasons』という本に含まれる中編小説の1つ
(著者Stephen King)
映画原題:Stand by Me
最初の出会いは、小学生のころ英語教室で見せてもらった映画『スタンド・バイ・ミー』でした。当時の自分と同じ年ごろの少年4人が主人公のこの映画は、私のお気に入りの映画になりました。
この映画に原書があると知ったのは、ほんの数年前のことです。ホラー映画作家として有名なスティーブン・キングの小説がこの映画の元になっていると知り、驚きました。原題『The Body』(死体)のイメージは、青春・友情・冒険映画である『Stand by Me』のイメージとかなり異なります。タイトルが変えられているので、内容も小説と映画ではだいぶ異なっているのかなと思いながら原書を読み始めたのですが、予想に反して、小説と全く同じまたはほぼ同じ台詞が映画でもたくさん使われていることが分かりました。ただ、映画と本ではその同じ台詞を言う人物が異なっている場合もあり、ストーリー的にもいろいろと違う部分があります。
両者を比べると、どちらもそれぞれの内容にあったタイトルになっているように感じます。小説は、ホラー作品ではないものの、現実的な怖さがあります(年上の不良に徹底的に痛めつけられる等)。一方、映画は、爽やかさやほろ苦い青春を感じるような内容です。個人的にはこの爽やかさのある映画の方が好きなのですが(同名の主題歌「Stand by Me」もまた良い!)、小説には、映画には描かれていない細かな描写や背景の話がたくさんあります。映画だけは見たという人も多いかもしれないですが、原書も読んで違いを比べてみるのもお勧めです。
余談ですが、原書のタイトル『Different Seasons』は、翻訳本では『恐怖の四季』という副題になっています。こちらは、なぜか日本語版の方が怖さを感じるタイトルです。また、『Different Seasons』には、映画『ショーシャンクの空に』(原題:『The Shawshank Redemption』)の原作である『Rita Hayworth and Shawshank Redemption』も含まれています。こちらも原作と映画は少し異なるので、違いを楽しめる作品です。
現在は、海外の書籍も簡単に購入できますし、映画のサブスクリプションサービスもいくつもあります。また、デジタル図書を閲覧できる図書館サービスも増えています。空いた時間に読書や映画鑑賞をしながら外国語に触れてみてはいかがでしょうか。
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品質管理課メンバー:めだか |
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