2023.07.21
翻訳ハック

弊社チェッカーに聞く~MTPE(機械翻訳ポストエディット)作業のポイント


近年、MTPE(機械翻訳ポストエディット)作業を検討する方が増えています。
そこで今回はMTPE作業について、弊社の作業者にMTPE作業の際に気を付けていることについて聞いてみました。



 
MTPE(Machine Translation Post-Editing/機械翻訳ポストエディット)とは、AIを利用した機械翻訳の出力結果を人間の目でチェックして、スタイルガイドに合うように直したり、誤訳を修正したりする作業のことを言います。
今回はMTPEをするときに具体的にどのような作業をしているか、例を挙げながら説明したいと思います。

MTPEをするときにチェックしていることは、主に5つあります。

1. 固有名詞が正しいか
固有名詞や専門用語が文脈に合うように訳されていないことがあります。たとえば、”Prime Minister”が日本の話ではないのに「総理大臣」とされていたらおかしいので、「首相」などその国に合った呼称に修正すべきです。また、訳語の統一もMTの苦手分野とされていますので、ひとつずつ丁寧に確認する必要があります。

2. 訳文に過不足がないか(訳抜け・湧き出し)
特に長い文を機械翻訳にかけると、単語どころか節や文単位でごっそり抜けてしまうことがありますが、きれいな文章になっていて気づきにくいことが多いです。
また、原文になかったはずの言葉が追加されていることもあります。過去に出会った実例としては、”World Health Organization”という原文が「世界保健機関(WHO)」と略称を併記して翻訳されていたことがあります。脈絡のない数字などが追加されていることもあるそうです。これを「湧き出し」と呼びます。

3. 誤訳はないか
特に同じ単語で複数の別のものを指す場合や、慣用句などに誤訳が見られます。実例としては”mixture”を「生地」と訳したために「足を生地に浸す」と意味不明な文になってしまいました。また、慣用句は直訳してしまうことが多いです。
そのほか、andが何と何を並列しているのか、itが何を指すのかなど、係り受けが間違っている場合もあります。

4. スタイルガイドに沿っているか
こちらは人間による翻訳と同じです。

5. 自然な日本語になっているか
どこまで自然な翻訳になるよう直すかは、そのMTPEがフルエディットなのか、ライトエディットなのかが関係します。
ISO18587(ポストエディットの国際規格)の定義によると、フルエディットは人間による翻訳と同等になるように直すことで、ライトエディットは多少不自然でも理解できる文であればよいとするものです。
たとえば、人間による翻訳(フルエディット)では「それら」「彼」「彼女」など、代名詞はなるべく使わないようにするのが一般的ですが、ライトエディットでは意味が通じればそのままでもよいということです。

以上がMTPEで注意していることです。MTPEに特徴的な間違え方やフルエディットとライトエディットの違いはあるものの、翻訳物をチェックしているという意味では、基本は同じ作業です。何かと賛否両論あるMTPEですが、翻訳のプロフェッショナルとして特徴や得意分野をよく理解したうえで、便利に使いこなしていきたいものです。

 
 
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書いた人 翻訳チェッカー課 O
  2023年入社。ITエンジニアから翻訳チェッカーに異業種転職。

 
 

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