2023.08.04
翻訳ハック

弊社チェッカーに聞く~これはトライアル不合格!特許出願書類の場合


インターブックスでは、翻訳業務や翻訳チェック業務は各言語と各分野のトライアルを実施し、合格者のみが担当しております。
今回は、知財・特許分野での翻訳トライアル試験の採点担当者に「これはトライアル不合格!」と思うポイントを聞いてみました。


 
特許出願書類の中で、クレーム(特許請求の範囲)は最も重要な部分です。このクレームによって発明の内容が特定されますので、特許が認められる際には、クレームに記載された内容で権利範囲が決まります。そのため、クレームを翻訳するときには十分な注意が必要なのですが、特許翻訳のトライアルではクレームに関する基本的なことが守られていないことが意外にも多いので、これだと合格にはできないと思ったポイントについてお伝えいたします。

1.クレームの基本形式を無視
 
どんなにクレーム以外の翻訳文が良くても、クレームの基本的なスタイルに沿って翻訳ができていないと、トライアルに合格はできません。
クレームを英訳する場合、いくつか形式はありますが、例えば、独立クレームの典型的な形式として下記のようなものがあります。

1. An apparatus comprising:
  A;
  B; and
  C.

 
上記のように、各要素(A、B、C)を改行して列挙していなかったり、特別な理由もなく”comprising”以外の移行句が使われていたりすると、特許翻訳の基本が分かっていないのでは?と思ってしまいます。

2.冠詞の基本ルールを無視
 
どんなにクレーム以外の翻訳文が良くても、クレームでの冠詞の使い方を間違えると、トライアルに合格はできません。
英訳の場合、クレームでは、初出のものには不定冠詞を使うか無冠詞にし、既出のものには定冠詞を使うという基本ルールがあります。既出のものなのに不定冠詞を使うと権利範囲が変わってきたりするため、冠詞の使用には特に留意が必要です。

3.各要素の明確さを無視
 
どんなにクレーム以外の翻訳文が良くても、クレームで各要素を明確に説明できていないと、トライアルに合格はできません。
クレームでは、1つの請求項を体言止めの1文で書きますので、各要素を説明する際に修飾部分が長くなってしまったり、文の構造が複雑になったりして、読みにくい不明確な訳になりがちです。例えば、和訳でXXという要素を説明する際に、「yyに接続されたzzを有するXX」といった言い方だと修飾関係が明確ではありません。「yyに接続されたXXであって、zzを有するXX」などのようにより明確な訳になるよう一工夫も必要です。

以上の内容は、特許翻訳に携わっている方でしたら当たり前のことかもしれませんが、トライアル翻訳ではよく見受けられるポイントです。せっかくクレーム以外の明細書の翻訳がうまくできていても、重要なクレームの翻訳の基本ができていないとトライアル合格への道は遠のきますので、今一度クレーム翻訳の基本を見直してから、トライアル翻訳を提出していただければと思います。

▼書いた人
翻訳チェッカー課 T
特許翻訳のプロジェクトマネージャーからチェッカー専門職に転課。翻訳・チェッカー応募者のトライアル採点も担当。

 


 
■ インターブックスの特許出願明細書翻訳はこちら
■ インターブックスの実績紹介はこちら
■ インターブックスの登録・採用情報はこちら

 

インターブックスサービス資料ダウンロード

資料ダウンロード

関連記事